自己破産するには?破産の概要と要件のまとめ
積み重なった多額の借金を無くすため、自己破産をしようかと悩んでいる方がいると思います。
しかし、自己破産とはどのようなもので、どんな場合にできるのでしょうか?すなわち、自己破産するには条件がいるのでしょうか?
ここでは自己破産について、自己破産するための要件について説明します。
このコラムの目次
1.自己破産とは
(1) 自己破産の意義
自己破産とは、裁判所から免責許可をもらうことによって借金を無くす手続きです。破産について定める破産法は、破産者と債権者との間の権利関係を調整し、もって債権者の公平な満足と破産者の経済的再生を目的としています(破産法1条)。
つまり、破産者は債権者に借金を返済することができない状態ですが、いつまでもこの状態でいるのは、双方にとって適切ではありません。
そこで、破産者の財産を分配して債権者の満足を図り、また破産者の債務を免責することによって、そこから新たなスタートを切ることを、破産法は目指しているのです。
裁判所から免責許可(裁判所による債務の支払いを免れる決定)が出されると以前に発生した債務の支払を免れます(破産法253条等)。そのため、免責許可が出されると、今ある借金がゼロになり、債務のない新たな生活を始めることが可能になります。
他方、破産すると、日常生活に必要なものを除いて所有不動産・車などの高価な財産が債権者のために換金され、一定期間クレジットカードの使用ができなくなる、一定の職業に就業不可になる等の不利益が発生します。
もっとも、自己破産をすることで刑罰を科される、選挙権が剥奪されるということはありません。
(2) 自己破産の手続き(管財事件と同時廃止)
破産手続きは、債権者・債務者が裁判所に対し、破産手続き開始の申し立てをし、裁判所が以下2で述べる要件を満たすと判断した場合に開始します(破産法15条1項、18条1項、30条1項等)。
破産手続き開始の決定後の具体的な進め方は、管財事件と同時廃止の2つがあります。
管財事件は、破産者の財産を平等に債権者に配分するために、財産の調査、管理、処分、換価、配当が行われるもので、自己破産における基本的な手続きです。
他方、同時廃止は、破産者が財産をもってして破産手続きにかかる費用を支払うことができない場合に、開始決定と同時に破産手続きを終了させるものです(破産法216条1項)。
つまり、破産手続きは、破産者の財産を評価・換金し、債権者に平等に借金を返済するものですが、破産者に目ぼしい財産がない場合、わざわざ破産管財人を選任し、上記手続きを行う必要はありません。そのため、管財事件のような手続きを行わず、同時廃止で破産手続きを終了させ、借金を免除するかどうかの判断に移ります。
同時廃止となる基準は、明文上、債務者の資産が破産管財人の報酬金などの手続きにかかる費用(弁護士費用は別途でかかる)に足りない場合とされています。一般に、破産の申し立てをする人は、破産手続きにかかる費用を支払えない場合が多いので、同時廃止となることが多いです。
もっとも、具体的な金額は地域ごとに異なり、また、それ以外の事情(免責不許可事由があるか)も考慮されます。
(3) 他の手続きとの比較
自己破産は債務整理と呼ばれるものの一つです。債務整理として他に、任意整理・個人再生が挙げられます。
任意整理は裁判所ではなく弁護士等が貸主・借主の間に入って債務の減額・免除や分割弁済の交渉を行う私的な債務整理です。
個人再生は裁判所が再生計画という債務を減額したうえで分割弁済とする支払計画を認可する公的な債務整理です。
任意整理と個人再生・自己破産は裁判所の関与の有無が大きな違いです。自己破産と民事再生は、裁判所による関与がある点で同じですが、
- 原則として債務の全額が免責される自己破産に対して、個人再生は減額して分割払いすることを認める制度
- 一定額以上の資産価値ある財産は処分される自己破産に対して、財産の処分は要求されない個人再生
- 資格制限を受ける自己破産と、そのような制限のない個人再生
という違いがあります。
2.自己破産の要件
自己破産(免責許可)が認められるには(1)支払不能、(2)免責不許可事由に該当しないことが必要です。
(1) 支払不能とは
支払不能とは「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいいます(破産法2条11項)。
つまり、支払うべき時期が来た借金を、自分の財産だけでなく信用や労力等を考慮しても、返し続けられない状態が支払不能です。
(2) 免責不許可事由とは
裁判所に支払不能と認定されても、免責不許可事由に該当すると、免責許可を受けられません(破産法252条1項)。免責不許可事由は以下のものになります。
1号 | 債権者を害する目的で、債権者に不利益な処分等、債権者への返済に回す財産の価値を不当に減少させた |
---|---|
2号 | 破産手続きの開始を遅延させることを目的として著しく不利益な条件で債務を負担する等 |
3号 | 特定の債権者に対して偏った弁済等する行為(偏頗行為) |
4号 | ギャンブル、過度の浪費等による財産の減少や過大な債務負担 |
5号 | 一年以内の詐欺的金銭借り入れ |
6~11号 | その他破産手続きの公正さを欠く行為等 |
もっとも、例外があります。
つまり、免責不許可事由に該当しても、裁判所は、破産手続き開始に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責の許可を決定することができます。(破産法252条2項)=裁量免責
これにつき、裁量免責を認めるか具体的な基準が定められているわけではありません。
しかし、例えば、免責不許可事由が多数存在する、破産手続きの進行に際し非協力的、浪費癖、ギャンブル癖が矯正されてないこと等は、裁量免責を認めるうえでマイナス方向に働く事情といえるでしょう。
もっとも、統計上、免責不許可とされることはほとんどありません。
免責申し立ての結果 | 2017年 | 2014年 | 2011年 |
---|---|---|---|
許可 | 96.77% | 96.44% | 96.67% |
不許可 | 0.57% | 0.00% | 0.08% |
参考:日弁連「破産事件記録調査」「2014年破産事件及び 個人再生事件記録調査」
ちなみに、子供の養育費、個人事業主の労働者の給与、租税等の一部債務は、裁判所による免責許可を得ても、免責されません(破産法252条1項各号)。
3.まとめ
自己破産手続きで免責許可をしてもらえば、前述の【免責されない債務】を除いて現在ある借金を帳消できます。
しかし、自己破産が可能かを自分で判断するのは困難です。自己破産をお考えになっている方は、一度弁護士にご相談し、債務整理に関するアドバイスをもらうことをお勧めします。
-
2019年1月17日債務整理 小規模個人再生のメリットとデメリットを弁護士が解説!
-
2020年1月17日債務整理 FXや株式投資に失敗した借金の個人再生による減額
-
2020年1月17日債務整理 給与所得者等再生に失敗しないために|個人再生をするための条件