法人破産

破産だけではない!会社の倒産方法の一つ「特別清算」とは何か?

破産だけではない!会社の倒産方法の一つ「特別清算」とは何か?

「会社の倒産=破産」と思っている方は多いと思います。しかし、実は倒産には破産以外にも様々な方法があります。

ここでは、倒産処理の一種である「特別清算」について、破産と比較しながら説明します。

1.会社の特別清算とは

会社が倒産をするときの処理方法には、私的整理と法的整理があります。

私的整理は裁判外で手続を行うもので、債権者と直接交渉をして借金の減額と返済方法について話し合います。債務整理の中では任意整理にあたるものです。

法的整理は裁判手続で行うもので、「再建型」と「清算型」の2つがあります。

再建型を選んだ場合は、手続き後も会社は存続しますが、清算型を選ぶと手続き後に法人は消滅します。法人が消滅すると負債の返済義務を負う主体もなくなるので、実質的に借金は免除となります。

特別清算は清算型の手続になるので、その後は会社が消滅し負債もなくなります。

借金免除になるという点は破産に似ていますが、破産と特別清算はどんな点が違うのでしょうか。

2.特別清算と破産との違い

特別清算と破産の違いについて見ていきましょう。

(1) 根拠法

破産と特別清算は根拠となる法律が異なります。

破産は破産法に基づく制度です。破産法は277条に及ぶ項目があり、法律の規定がしっかりしている分、厳格な運用がなされます。

一方の特別清算は会社法に基づく制度です。会社法の中の「清算」は65条程度からなる法律で、破産に比べるとそれほど厳格ではありません。

(2) 開始要件

破産と特別清算は開始要件も異なります。

破産の開始要件は「支払不能」または「債務超過」の場合です。

一方、特別清算については「債務超過の疑いがある」または「清算の遂行に著しい支障をきたす事情がある場合」とされており、破産に比べると適用が緩やかです。

債務超過とは、会社の財産を全て処分しても借金を返済できない状態を指します。また、一過性ではなく継続的である場合に限られます。

破算の場合は、完全に債務超過の状態になっていなければ開始することができません。

しかし、特別清算は債務超過の疑いの段階でも開始できるので、条件は若干緩和されています。

もちろん、債務超過の疑いの中には債務超過も含まれるので、完全に債務超過の状態でも特別清算を開始することは可能です。

(3) 手続きを進める人(特別清算人)

会社を清算する際は手続きを進める人が必要です。破産と特別清算では手続きを進める人も異なります。

破産をするときは「破産管財人」が手続きを行います。

破産管財人は会社とは無関係の弁護士が裁判所によって選任されます。管財人は法律の専門家でなければなりません。

一方、特別清算をするときは「特別清算人」が手続きを行います。特別清算人は会社に関係ある人や、法律の専門家でなくても就任可能です。

通常は清算人が特別清算人に選任されるので、会社の代表者や代理人弁護士が特別清算人になるケースが多いです。

(4) 債権者の同意

破産と特別清算は債権者の同意が必要かどうかも異なります。

破産をするときは債権者の同意は特に要りません。破産の要件を満たしていれば、債権者が全員反対していても、管財人が債権者に財産を配当すれば会社を終了することができます。

それに対し、特別清算をするときは債権者の同意が必要です。

基本的に債権者の1/2、かつ債権額の2/3以上を持つ議決権者の同意が必要で、要件を満たせない場合は破産手続きをとることになります。

(5) 手続方法

破産を選んだ場合は、破産管財人によって債権調査がなされ財産を換価処分し、その後裁判所の許可をもらって債権者に平等に配当します。

一方、特別清算を選んだ場合は、特別清算人によって債権調査、財産の換価処分が行われます。

その後、債権者との話し合いが行われ、相手の同意を得た上で配当を行います。

いずれも配当を行った後に会社は消滅しますが、特別清算の場合はそこに至るまでに債権者の意向が強く反映されます。

(6) 利用する主体

破産は、個人でも会社でも社団法人でも誰でも利用することができます。会社は株式会社だけでなく、有限会社、合同会社などでもOKです。

一方、特別清算を利用できるのは株式会社に限られます。

(7) 基本的な清算方法は破産

破産と特別清算は、清算型の倒産処理という点では共通していますが、上記で解説した通りさまざまな違いがあります。

会社の清算方法としては、破産を選択するのが一般的です。特別清算を選ぶのはより柔軟な運用で会社を終わらせたいときに選ばれます。

3.特別清算のメリットとデメリット

(1) 特別清算のメリット

①手続を比較的早く行える

特別清算は、破産に比べると比較的早く手続きを行うことができます。破算は法律の規定も多く、破産管財人を選任する必要もあるので、それだけ時間がかかります。

一方、特別清算は認可の要件も少ないので、債権者の同意があれば手続きを前に進めることができます。

実際には会社の規模等によって終了までの時間は異なりますが、規模が同じ会社であれば特別清算を選んだ方が手続きを早く終えることができるでしょう。

②特別清算はイメージが良い

特別清算は破産に比べるとイメージが良い点もメリットです。

例えば、「あそこの会社は破産した」と聞くと経営者が失敗したという印象が強く残りますが、特別清算をしたといえばそれほどマイナスの印象は持たない人が多いのです。

実際には会社を清算してたたむことには変わりないのですが、対外的な信用問題が発生する場合には特別清算が選択されます。

例えば、子会社の業績が悪化したときに、破産させることで親会社の信用低下が免れないと判断される場合、しばしば特別清算が利用されます。

③手続費用が安い

特別清算は破産と比較しても手続費用は格段に安いです。

特別清算も破産も申立の際に裁判所に予納金を納めなければなりませんが、特別清算は予納金が極めて安いのです。

東京地裁の例を見ると、破産を選んだ場合は少額管財でも予納金は20万円、通常管財(法人)になると予納金は70万円以上が必要です。

それに対し、特別清算の予納金は、協定型で5万円、個別和解型で8,360円です。

また、特別清算人の報酬についても基本的には破産管財人の報酬より低いので、その点でも費用を抑えることができます。ただし、裁判所が清算人を選んだ場合は管財人と同等の額になることもあります。

④会社が特別清算人を選べる

特別清算は会社が手続きを進める人を選ぶことができます。

破産の場合は、手続きをする破産管財人は裁判所によって選任されます。管財人には面識のない弁護士が選ばれるのが普通なので、知らない人に会社の行く末を委ねるという点で不安になる経営者の方も多いことでしょう。

しかし、特別清算の場合は経営者自身が清算人になることもできるので、最後まで自分の責任で会社を負えることができます。

また、代理人弁護士が請け負う場合も、見ず知らずの人がなるよりは安心して任せることができます。

⑤子会社の場合は損金で計上できる

親会社が子会社の清算をするとき、貸付分が回収できなくなるので、そのお金は損金として計上することができます。

(2) 特別清算のデメリット

①株式会社に限られる

特別清算を利用できるのは株式会社のみなので、利用主体が限られる点はデメリットです。

株式会社以外が清算処理をするときは、破産以外の選択肢はありません。

②債権者の同意が要る

特別清算は債権者の同意が必要で、債権額の大きい議決権者が否決に回ってしまうと失敗に終わります。 

よって、特別清算で多いのは、親会社が子会社をたたむ場合などで、親会社が債権の大部分を所有しているような場合で利用されることが多いでしょう。

4.特別清算の流れ

特別清算の終結までの流れを見ていきましょう。

(1) 会社の解散

特別清算をすると決めたら、最初に会社を解散します。解散にあたっては株主総会を開いて会社解散の決議をする必要があります。

ここで解散の決議がされても会社が即消滅するのではなく、実際に会社がなくなるのは清算手続きが全て終了したあとです。

(2) 特別清算申立

株主の決議をとったら特別清算申立を行います。

要件を満たしていると裁判所が判断した場合は、特別清算開始命令が下され、既に株主総会で選ばれている清算人が正式に就任します。

清算人は会社の財産管理、換価処分を行って配当の準備をします。

(3) 協定型特別清算の場合は債権者集会を開催

特別清算は「協定型特別清算」と「個別和解型特別清算」の2つがあります。

協定型特別清算はここで債権者集会が開かれます。協定型はここで債権者の1/2かつ議決権者の総額の2/3を超える同意を得る必要があり、成立した場合は協定が可決します。その後、裁判所で協定案認められたのちに、清算人は債権者に配当を行います。

否決された場合は特別清算の手続きは終了となり、破産手続きに移行することもあります。

個別和解型特別清算を選択する場合は、全ての債権者と個別に和解をします。

協定型は債権者同士が平等であることを求められますが、個別和解型の場合は必ずしも債権者間が平等である必要はありません。

(4) 終結

債権者への配当が終了したのちに特別清算の手続は終結します。清算終結と共に会社の権利義務は全てなくなり、会社の法人格も消滅します。

5.法人の倒産手続は早めに弁護士に相談を

法人破産手続きは複雑なため、どの方法を選択するのがベストかは専門家と相談をして決める必要があります。

会社の状況が悪くなった場合でも、早期であれば倒産させずに再建させられる可能性もありますが、対応が遅くなるとその道も閉ざされるので、経営が傾いた段階ですぐに対処することが肝心です。

泉総合法律事務所では、法人様の支援も積極的に行っており、倒産に関するご相談も承っております。

今、会社の経営でお困りの場合は、一度泉総合法律事務所にご相談ください。

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