債務整理

自己破産することによるリスクには何がある?

借金が重なりどうしようもないから自己破産したい。しかし、自己破産することで自分にどんな利益・不利益が生じるのだろう?

そんな疑問に答えるため、自己破産のリスク(デメリット)・メリットについて解説します。

1.自己破産とは

自己破産とは、裁判所から免責許可をもらうことで債務をなくす手続きです。破産を規律する破産法は、破産者の今ある財産を、債権者に平等・公平に配当して満足を与え、また、債務者の残った債務を免責することで、債務者の更生を図ることを目的としています(1条)。

裁判所から免責許可を得ると、以前に発生した債務の支払いを免れることができるようになります(破産法253条等)。

債務をゼロにする、という強力な手続きというだけあり、自己破産には以下のようなリスク・デメリットがあります。

2.自己破産のリスク・デメリット

(1) 家や車などの財産が処分される

「自由財産」以外のものは、債権者のために処分・換金されてしまいます。
自由財産とは、新得財産(破産手続き開始決定後に取得した財産、例えば、開始後決定後に得た給与)、99万円以下の現金、差し押さえ禁止財産(衣服・洗濯機・家具等の生活必需品等)などを言います(破産法34条3項各号)。

生活に必要と認められる以上の一定額の価値ある資産は処分されてしまうので、家や土地はもちろん、高価な車や貴金属、宝石、有価証券などは、原則として処分の対象となるでしょう。

債務整理したいが家・車を残したい人は、自己破産ではなく個人再生手続きを考えるべきでしょう。

(2) 手続き中に就業不可な職業がある

自己破産することで、職場を解雇されることは、基本的にありません。

しかし、法律上、破産者になると、就業が制限される職業があります。例えば、弁護士・司法書士・行政書士等の士業、一部の公務員(公証人、公正取引委員会等)、商工会議所等の役員がこれにあたります。

もっとも、破産者が免責許可を得ると、この就業制限はなくなります(免責許可を得るまでの期間は早ければ数か月です)。

(3) クレジットカードが利用不可になる(ブラックリスト)

自己破産をすると、信用情報機関の間では、その人が破産をしたという事故情報が共有されます。つまり、破産前に使用していたクレジットカード会社や消費者金融以外も、その人物が過去に破産したという情報を知ることができるのです。

そのため、破産後は、新たなカード作成をする・新たに借入をするに際しての審査等が厳しくなり、通常、これに通ることができません。

ブラックリストは、一定期間(5~10年)残るので、その間、クレジットカードを利用したり、新たな金銭を借入れたりすることが困難になるということです。

(4) 保証人に対する影響

債務に保証人がついている場合、自己破産しても、保証人の保証債務は無くなりません。

そのため、例えば、家族が連帯保証人となっている場合、家族に対して請求がいくことになってしまいます。

(5) 免責が認められない場合がある

自己破産をして免責を得るためには、免責不許可事由に該当していないことが必要です。免責不許可事由とは、たとえば、財産の隠匿、7年以内に免責許可を受けた、偏頗弁済、借金の原因がギャンブルや浪費等です(破産法252条1項各号)。

もっとも、免責不許可事由に該当しても、裁判所による裁量で、免責が許可される場合があります(破産法252条2項)

3.自己破産のメリット

以上のことを聞くと、自己破産って悪いことしかないじゃないか、と思われるかもしれません。
しかし、自己破産することで得られるメリットも多々あります。

(1) 借金がゼロになる

自己破産の一番の利点と言えます。つまり、裁判所から免責が認められると、一部の債務(租税、子の養育費等)を除いて、今ある借金が帳消しになります。
借金の額の如何は関係ありません。

借金をゼロにすることによって、今の借金がある生活から解放され、新たな生活をスタートすることが可能になります。

(2) 借金の取り立てや支払を求める訴訟が止まる

債務整理手続き(自己破産・個人再生・任意整理)をするに際して、最初に行われることが、弁護士による、債権者に対する受任通知の発信です。

これを送ることで、消費者金融やクレジット会社などの貸金業者等による直接の取り立てが止まります。また、弁護士ではなく、裁判所から通知がなされた場合も同様です。

これは、法律上認められるものです(貸金業法21条1項9号、サービサー法18条8項)。これに反して、取り立てをすることは、刑罰などの対象となります。

そのため、しつこい支払の催促を受けていた人も、その苦しい状況から抜け出すことができます。

また、破産手続き開始の決定があると、破産者の財産に関する訴訟(債務の支払いを求める訴訟等)は中断します(破産法44条1項)。また、開始決定後は、財産に対する強制執行(差し押さえ)等も禁止されます(破産法42条1項)。

(3) 一部の財産を残せる

先述したように、自己破産は、破産者の今ある財産をもって、債権者に平等・公平な満足を与える制度です。そのため、価値ある財産は、債権者に対する支払いに回されてしまいます。

しかし、財産全てを弁済に充ててしまったら、破産者は以降の生活が困難になります。そのため、先述の通り、自由財産は処分されずに手元に残ることになります。

また、自由財産を拡張すること(つまり処分しなくて良い財産の範囲を広げること)も可能なことがあります(破産法34条4項)。

自由財産の拡張の基準は、裁判所によって異なります。例えば、東京地裁の場合、残高20万円以下の預貯金、査定金額20万円以下の自動車等がこれに当たるとされます。

4.自己破産に対する誤解

最後に、一般に言われる、自己破産に対する誤解を解消します。

(1) 選挙権

自己破産をすることで、選挙権が制限されるという内容の規定は存在しません。
選挙権が制限されるのは、禁固以上の受刑者や一定の選挙犯罪が行われた場合になります。

(2) 住民票と戸籍

自己破産手続きが開始されると、その旨が官報に記載されます(破産法32条)。
しかし、官報を閲覧している人はほとんどいませんから、知られるリスクはほとんどないでしょう。

官報以外の公的なもの(住民票や戸籍)に破産情報が載ることはありません。

(3) 引っ越しや海外旅行

破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができません(破産法37条)。
つまり、裁判所の許可が必要になりますが、引っ越しが不可能になるというわけではありません。

また、長期の旅行も、居住地を離れることになるため、同様に許可が必要です。

もっとも、これらは破産手続きが行われている間だけであって、手続きが終了すると、この制限はなくなります

5.まとめ

これまで、自己破産によるメリット・デメリットについて解説してきました。

これを見ると、自己破産したほうが良いか否かの判断が困難だという方も多いでしょう。
そのような場合は、自己破産に精通した弁護士に相談し、自らにとって最善の手段を考えてもらうことをお勧めします。

自己破産についてお悩みの方は、泉総合法律事務所の無料相談をぜひご利用ください。

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