個人再生における官報の掲載のタイミングや閲覧方法・期間など
個人再生手続とは、裁判所を利用して、支払えない恐れのある借金を、大幅に減額してもらえる債務整理手続です。裁判所に財産が処分されない、住宅ローンがあっても持ち家を残せるなど、自己破産にはないメリットがあります。
ただし、裁判所を用いる債務整理手続ですので、様々な規制があります。その一つが、個人再生手続をしたことが官報に掲載されることです。
官報への掲載により、周囲の人に借金がばれてしまうのではないかと不安に思われている方は珍しくありません。
このコラムでは、官報に掲載されるタイミングや内容・官報の閲覧方法や期間などを説明します。
また、周囲にバレるとしたら、どのようなことがきっかけになってしまうのか、官報より注意すべきことも説明します。
このコラムの目次
1.官報とは
官報は、政府により発行される新聞のようなものです。
主な目的は、国民に広く伝える必要がある、法律や政治などに関する重要な情報の公表です。しかし、紙面の大部分を占める内容は、個人再生や自己破産など、裁判所を用いる債務整理手続をした人に関する情報となっています。
ですから、個人再生手続をする人に関する情報が、毎日、官報に掲載されています。
なお、他の公的な書類に、個人再生をしたことが掲載されることは一切ありません。住民票や戸籍には、一切記録されません。
自己破産手続では、ごく例外的な場合に、本籍地の市町村に保管されている「破産者名簿」に登録がされますが、個人再生手続ではそのようなことはありません。
2.官報に掲載されるタイミングや内容など
基本的な掲載内容は、
- 債務者の名前
- 債務者の住所
- 決定がされた日時
- 決定をした裁判所
などです。なお、借入先や借金の金額、借金の原因は載りません。ギャンブルなどにハマってしまったことを恥ずかしく思っている方は、ご安心ください。
また、官報に個人再生手続に関することが掲載されるタイミングは、手続の中で3回あります。
(1) 裁判所が手続を始めると決定してから約2週間後
手続の申立てを受けた裁判所が、手続開始を決定すると、債権者に手続に参加することを呼びかけるため、官報に掲載されます。
(2) 裁判所が再生計画について、債権者の賛否や意見を求めると決定してから約2週間後
債務者が作成した再生計画の案を認可するか裁判所が判断する前に、債権者に対して再生計画案を認めるか、または何か意見があるかを確認するため、官報で債権者に連絡を行います。
再生計画に対する債権者の関与は、最後の手続の基本説明をお読みください。
(3) 裁判所が再生計画を認可決定してから約2週間後
裁判所が再生計画を認可決定したことが確定すると、借金の支払負担が再生計画に従い減額されます。そのため、債権者に最後の反対意見を言う機会を与えるのです。
しかし、そもそもだれが個人再生をしたか興味をもって読む方はほとんどいません。
また、毎日、日本全国でたくさんの人が個人再生や自己破産をしているため、たくさんの人が掲載されています。その中からあなたの名前を見つけ出すのは至難の業です。
さらに閲覧方法や期間からしても、なおさら官報により周囲の人にバレるリスクは少ないといえます。
3.官報を閲覧できる方法や期間
官報は、新聞のように、紙面版とインターネット版があります。それぞれについて閲覧できる期間や閲覧方法を説明します。
(1) 紙面版の官報
紙面版の官報が、販売されているのは、基本的にほとんどの場合一つの県に一つしかない政府刊行物売り場です。
図書館の中には、官報を購入し、閲覧できるようにしているところもありますが、限られた大きな図書館のみです。
そのため、官報を読むことも一苦労なのです。
郵送定期購読サービスもありますが、一般の方が利用していることはほとんどないでしょう。
また、日々新しく発行されますから、過去の紙面版の官報を閲覧するには、図書館を利用することになります。自治体にもよりますが、さほど閲覧期間は長くありません。
例外的に、国会図書館には、全ての官報が永久保存されています。
しかし、膨大な過去の官報からあなたの名前を見つけ出そうとする人がいるでしょうか?紙面版の官報への掲載は、ほとんど気にする必要はありません。
一方で、技術の進歩により、どこでも閲覧することができ、また、情報を検索することができるため、手間も省けるインターネットはどうでしょうか。
(2) インターネット版の官報
結論から言うと、インターネット版の官報によっても、あなたが個人再生手続をしたことが周囲にバレることはほとんどありません。
まず、インターネット版の官報は、検索サービスに引っかかることのない画像ファイルにより提供されています。
検索サイトにあなたの名前を打ち込んでも、官報閲覧画面であなたの名前を検索しても、あなたの名前がヒットすることはないのです。
官報の内容を検索するサービスもありますが、有料ですから一般の方が利用することはまずありません。
しかも、個人再生に関する部分などは、閲覧期間が30日に制限されています。この期間制限を解除するにも、有料登録が必要です。
ですから、インターネットによっても、個人再生をしたことが周囲の人にバレる可能性はほとんどないのです。
4.個人再生手続をしたことをチェックしている人とは?
(1) 闇金業者
例外的に、有料サービスなどを使ってでも、だれが個人再生をしたかを逐一確認している人がいます。それは、闇金業者です。
個人再生手続をしたということは、お金に困っているということですから、闇金業者は、借金の勧誘候補として、官報に記載されている個人再生手続をした人を狙ってきます。
当然のことですが、ダイレクトメールなどで、闇金からの借金の勧誘が来ても、無視しましょう。
(2) 自己破産では問題だが個人再生では問題にならない人
なお、自己破産手続では、手続中、警備員や保険外交員など、働けなくなる資格や職業があります。そのため、その業界の企業の担当者は、官報をチェックしていることがあります。
しかし、個人再生手続には、資格制限がありません。
自己破産したとすれば制限されてしまう資格で働いていたとしても、個人再生手続をしたことはチェックされないでしょう。
5.官報より気を付けるべき、周囲にバレる原因
官報により周囲の人にバレることはほとんどないということをご理解いただけたと思います。
それ以外に、一般的に個人再生の事実が公開されることはありませんから、基本的に周囲の人に個人再生をしたことはバレません。
しかし、以下の相手には個人再生をしたことがバレることになります。以下、詳しく説明します。
(1) 借金をしている相手
友人や親族、勤務先であろうと、借金をしていれば、個人再生手続に巻き込まれますから、ばれてしまうことは避けられません。
債権者をえり好みすることはできません。個人再生手続など、裁判所を用いる債務整理手続では、全ての債権者を公平に扱わなければならないのです。
このルールは「債権者平等の原則」と呼ばれ、非常に重要視されています。
借金していることを隠せば、手続を途中で打ち切られる可能性があります。
(2) 保証人
保証人がいる借金が債務整理の対象になると、保証人に対して、残る借金が一括請求されてしまいます。
債権者平等の原則がある以上、保証人がいる借金を手続から除外できません。
保証人は、あなたが個人再生手続をしたことを知るだけでなく、大金を一括で支払わなければならないことになる恐れがあります。
債権者との交渉がうまくいけば、あなたがそれまで支払っていた通りの分割払いにすることもできます。
ともかく、保証人が、準備と心構えをするため、事前の連絡を忘れないでください。
いずれも債権者平等の原則という、裁判所を用いる以上避けられない重要なルールが原因で、周囲の人にバレてしまうものです。
個人再生手続をする以上、上記の人にバレないことはありません。
しかし、個人再生手続で債務整理をしなければ、どのみち周囲との関係は決定的に壊れてしまうでしょう。勇気を出して、個人再生手続をすることを、あらかじめ伝えてください。
6.個人再生は弁護士に相談を
個人再生手続は、デメリットをできるだけ少なくしつつ、借金の負担を大きく減らすことができる使い勝手の良い債務整理手続です。官報で周囲にバレる心配はほとんどありません。
友人からの借金がある場合や、親に保証人になってもらっている奨学金がある場合は、友人や親にバレてしまうことは避けられませんが、あらかじめ弁護士に相談し、適切な対応をとれば、対策をしやすくなります。
泉総合法律事務所では、個人再生手続に精通した弁護士が多数在籍しております。墨田区、台東区、葛飾区、総武線・中央線・半蔵門線沿線にお住まい、お勤めの皆さんのご相談をお待ちしております。
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