債務整理

過払い金の金額の計算方法

過払い金の金額の計算方法

過払い金が請求できるといっても、いったいいくらかなんて見当がつかないという人は多いことでしょう。

そんなに多くはないんじゃないか、面倒だしいいやという風に思ってしまう前に、ざっとでもいいから、計算してみませんか。

このコラムでは、過払い金の金額の計算方法をご紹介します。

正確な計算は弁護士に依頼すべきですが、弁護士に依頼する前に、その意味があるかどうかを確認することができれば、請求をする意義が見いだせるでしょう。

1.過払い金の計算方法

過払い金とは、貸金業者がお金を貸し付けた相手から法律上の理由なく取り立てすぎたお金のことです。

その計算方法を説明する前に、そもそもなぜ過払い金を貸金業者に返還請求出来るのか、過払い金の発生の仕組みを簡単に説明します。

(1) 発生の仕組み

かつて借金の利息を制限する法律である利息制限法と、出資法では、上限利息に大きなずれがありました。利息制限法では、最高でも年20%だったのに対して、出資法では年29.2%まで利息を取ってよいとされてしまっていたのです。

この間の金利をグレーゾーン金利と呼びます。

貸金業者は、利益を上げるためにグレーゾーン金利での利息の取り立てを行っていましたが、最高裁判所によりグレーゾーン金利は否定されました。

その結果、貸金業者からお金を借りていた人は、借金を返し終わっていたはずなのに、さらにお金を貸金業者に渡してしまっていたことになったのです。

ですので、その渡しすぎたお金を取り戻すことができるようになりました。それが、過払い金返還請求です。

(2) 引き直し計算

過払い金の金額の計算方法は、一般的に「引き直し計算」と呼ばれています。貸金業者の違法な利息にもとづいて返済していた取引について、利息制限法に基づいた金利で計算をし直し、どれだけお金を支払いすぎていたかを明らかにするのです。

まずは、とても単純に考えてみましょう。

100万円を28%の金利で借りて、1年後に利息含めて全額一括返済する契約をしていたとしましょう。この場合、利息は年に28万円、1年後の返済額は128万円です。

利息制限法では、100万円以上の借金をした場合には、上限金利は15%とされています。よって、適法な利息は、年15万円までですから、115万円までしか返済しないでよいはずです。

にもかかわらず、128万円を支払っていれば、差額の13万円を過払い金として取り戻せるわけです。

もちろん、実際には、一年後に一括で返済するという契約にはなっていないでしょう。1か月ごとに、元本と利息について少しずつ返済していったはずです。

また、返済期間も数年に及びますし、返済だけでなく、新たな借り入れもしていたことでしょう。

つまり、利息計算のもととなる元本の金額が、取引の間、常に変動し続けていますから、金利の差から直接に払いすぎた利息を計算するわけではありません。

利息制限法の上限金利で返済をしていたらどうなっていたのかを計算し、その結果と、実際の返済額を比べて、払いすぎたお金を計算するのです。

ですので、過去の取引から順番に、丁寧に計算していくことが必要です。

(3) 取引履歴

貸金業者は、あなたとの取引の記録を保管しています。それが取引履歴です。

最高裁判所の判決により、貸金業者は、取引履歴を開示することが義務付けられています。貸金業者に対して、取引履歴を開示するよう要求してみましょう。

2週間、遅くとも数か月すれば、手元に取引履歴が届くことがほとんどです。

取引履歴が到着したら、早速過払い金を計算してみましょう。

(4) 過払い金の計算のポイント

過払い金を計算するには、

  • 日付
  • 借入額
  • 返済額

が大きなポイントになります。

インターネットには、自力で過払い金の金額を計算するためのツールが無料で配布されています。正確な計算は難しくとも、ざっとした見通しをつけることは出来るでしょう。

一般的なツールの使い方としては、借入や返済を行った日付、借入額や返済額を入力し、借入金額に応じた利率を入力することになります。

2.高額の過払い金が見込まれる事情

計算するのもちょっと…という方の場合は、以下のポイントを目安にしてください。

(1) 返済期間が長い

利息制限法の上限金利を超えた金利で利息を支払い続けている期間が長ければ長いほど、支払いすぎた利息の金額が大きくなりやすくなります。

(2) 借入金額が大きい

借入金額が大きければ、その分利息の金額も大きくなります。さらに、借入金額が大きいと、利息制限法上の上限金利は小さくなりますから、貸金業者が取り立てていた利率との差は広がります。

結果として、支払いすぎていた金額がより大きくなるのです。

(3) 返済していた借金利息の利率が大きい

グレーゾーン金利があった当時でも、貸金業者の利息には差がありました。

一部には、利息制限法を守っていたため、過払い金がない貸金業者もありますが、ほとんどの貸金業者は、グレーゾーン金利のめいっぱい、出資法の上限金利である29.2%で利息を取り立てていました。

あなたが借りていた貸金業者との契約で、利率が大きければ大きいほど、利息制限法上の上限金利との差は大きくなりますから、過払い金は増えやすくなります。

3.過払い金を返還請求する流れ

過払い金があるようであれば、貸金業者に請求してみましょう。

過払い金返還請求は、まずは貸金業者などとの交渉、それがまとまらなければ、裁判で行います。

(1) 交渉による請求

いきなり裁判というわけではなく、まずは交渉から始めます。

わずかながら、最初から満額回答をしてくれる業者もいます。しかし、ほとんどの業者は、元本の9割がせいぜいです。

過払い金には、5%の利息が付きますが、そこまで支払ってくれるところはほとんどありません。それでも交渉による請求のメリットは、すぐに過払い金が戻ってくるということです。

裁判となると、1年以上かかってしまうこともあります。

それでも、できる限り過払い金を取り戻したいというならば、裁判で請求することになります。

(2) 裁判による請求

裁判で勝訴すれば、過払い金全額はもちろん、その利息も支払ってもらえます。

過払い金の利息は、過払い金が発生した時から生じますから、過払い金の半分にもなることすらあります。決して無視できる金額ではありません。

もっとも、もちろん、敗訴してしまえば、過払い金を支払ってもらえることは無くなります。

そこで裁判となっても、雲行きが怪しいとなれば、改めて貸金業者と交渉し、満額でなくても、ある程度の過払い金の返還をしてもらうことで合意することも選択肢の一つです。

4.過払い金返還請求の注意点

過払い金返還請求は、比較的リスクの少ない法律問題であることは事実です。

しかし、法律の専門知識が無ければ、思わぬ落とし穴にはまってしまいかねないのです。

(1) 消滅時効や取引の分断

過払い金返還請求は、取引を終えてから10年を経過すると、消滅時効制度により、請求出来なくなります。

また、借金をいったん完済したあとに、また同じ業者から借金をしたという場合には、完済の時に取引が終了していたとされることがあります。これを取引の分断と呼びます。

10年以上前に取引の分断があると、それ以前の過払い金は、時効により請求出来ません。

単に完済したというだけでは、取引の分断があったとはされません。取引の空白期間の長さや、その前後での契約の内容など具体的事情によります。

今でも、弁護士と貸金業者の間で非常にはげしく争われ、裁判所の判断基準も明確になっていない難しい問題です。

(2) 貸金業者との和解

借金返済が滞ったときに、貸金業者と借金減額の和解をすると、その和解契約の中で、過払い金返還をしないと約束させられてしまうことがあります。

不当な和解契約であることを裁判所に認めてもらわなければ、過払い金返還請求が非常に難しくなります。

(3) 貸金業者による遅延損害金の後出し

借金返済が滞ってしまうと、その時点での借金残高を一括返済するという契約になっていることがほとんどです。「期限の利益の喪失」といって、分割払いが許されなくなるのです。

ところが、貸金業者は、一括返済を要求して自己破産されてしまうよりも、確実に返済してもらった方がましということで、多少遅れがあっても支払いが続いている限り、実際に一括返済を要求することはありません。

にもかかわらず、過払い金返還請求をされたあとに、今さら支払いの遅れがあったから遅延損害金を支払えと言ってくることがあります。

遅延損害金の利率は非常に大きく、その利率がかかる金額は、支払いの遅れがあったときの借金残高全額ですから、完済していたはずなのに、莫大な遅延損害金を請求されてしまいかねません。

(4) ブラックリストへの登録

ブラックリストとは、信用情報機関の信用情報リストのことです。ブラックリストに登録されると、新しくローンを組むことや、クレジットカードを作ることが出来なくなります。

普通は、過払い金返還請求をしても、ブラックリストに登録されてしまうことはありません。

しかし、借金残高が残っている貸金業者に対して過払い金返還請求をすると、ブラックリストに登録されてしまいます。

過払い金で借金残高を支払い切れた場合には、過払い金が戻ってきた時に登録抹消をしてもらえるため、さほど問題にはなりません。

一方、過払い金をもってしても、借金残高を支払い切れなかった場合には、5年間、ブラックリストに登録されてしまいます。

クレジットカード会社のキャッシング枠を完済していても、ショッピングの支払が終わっていない場合や、完済した業者と借金残高のある業者が合併している場合などでは、特に注意が必要です。

5.専門知識が必要な過払い金の請求は弁護士に相談を

過払い金の金額は、かつてから長きにわたり返済してきた人の場合、予想もしない高額になっていることが少なくありません。試しにざっと計算してみると、驚きの結果が出ることもあります。

さて、過払い金返還請求は一人でもできるとうたったサイトは、インターネットに溢れています。しかし、最後に説明した注意点のように、過払い金返還請求も立派な法律問題であり、専門的な知識が必要になることがしばしばあります。

特に2019年現在では、時効の問題が生じやすいため、特に専門的な知識に基づいた裁判所対応が必要になる「取引の分断」が大きな問題になりがちです。

泉総合法律事務所は、これまで多数の過払い金返還請求について、任意交渉及び裁判双方の豊富な取扱い経験がございます。相談も無料となっておりますので、墨田区、台東区、葛飾区、総武線・中央線・半蔵門線沿線にお住まい、お勤めの方は、是非お気軽にご相談ください。

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