痴漢の証拠とは?疑われた際の対処法と共に解説

電車で痴漢をして逮捕!という話は頻繁に耳にします。
もっとも、被疑者を逮捕、ひいては起訴する場合、痴漢の証拠が求められます。それでは一体、どのようなものが痴漢の証拠となるのでしょうか?
ここでは、痴漢を証明する証拠、痴漢を疑われた場合の対処法について解説します。
このコラムの目次
1.痴漢を処罰する法律
実は、刑法上、痴漢罪というものは存在しません。つまり、痴漢で逮捕!という場合、その他の罪名で捕まったということになります。
痴漢行為を処罰する役割を担っているのは、各都道府県が定める迷惑防止条例、刑法上の強制わいせつ罪(刑法176条)です。
迷惑防止条例で処罰されるのは、衣服の上から他人の身体を触った場合などです。他方、強制わいせつ罪で処罰されるのは、上記行為を執拗に繰り返した場合、衣服の内部に手を入れ直接陰部や乳房に触れた場合などです。
痴漢の罰則は、東京都の迷惑防止条例を例に挙げると、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」(常習は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)となります。強制わいせつ罪の場合、「6月以上10年以下の懲役」となります。
2.痴漢の証拠
犯罪を犯した疑いがあるか否かは、証拠を基に判断します。
証拠が無いと、警察官は被疑者を逮捕することができません。また、証拠が無い場合、嫌疑不十分で不起訴処分となります。
他方、犯罪を犯した証拠があり、検察官が起訴の判断をすると、ほとんどの場合、有罪となってしまいます。
そのため、証拠の有無というものは、被疑者にとって、非常に重要なものです。
以下では、痴漢の事実を証明する証拠について説明します。
(1) 防犯カメラの映像
電車内に防犯カメラが設置されており、その映像に痴漢行為が映されていた場合、その映像はそのまま痴漢行為を証明する証拠となります。
また、被害者や目撃者が、犯行を携帯等のカメラで録画していた場合も同様です。
もっとも、痴漢は満員電車で行われることが多いことに鑑みると、痴漢を証明できる映像が残っていることは珍しいでしょう。
しかし、実際に防犯カメラの映像が証拠となることはありますし、電車内の防犯カメラの設置は、それだけでも重要な抑止力となっています。
(2) 繊維鑑定
被疑者の手等についた繊維を採り、被害者のスカートや下着の繊維が付いているかを確かめるものです。
痴漢事件において、被疑者は被害者に触れることになりますが、その際に被疑者の手等に被害者の衣服の繊維が付着することがあります。そして、繊維鑑定により、被疑者に被害者の繊維が付着していることが判明した場合、被疑者が痴漢行為を行ったことの証拠のひとつとなりえます。
逆に、繊維の付着がなかった場合、冤罪の可能性が高くなるといえます。
もっとも、繊維が付着していた場合でも、満員電車では、被害者にたまたま接触した可能性も否定できないので、それだけで痴漢行為を証明できるわけではありません。
(3) DNA鑑定
DNA鑑定は、近年行われることが増えています。
DNA鑑定では、被害者の衣服や身体から細胞を採取し、これを分析することで、被害者に触れた人物を特定することができます。
(4) 被害者の証言
痴漢事件は、上記で述べた客観的な証拠が残らないことも多いです。そのため、証言、特に被害者の証言が重視される傾向にあります。
そのため、客観的な証拠がなくても、被害者の真実味のある一貫した証言により、有罪となってしまう可能性があります。
(5) 第三者の証言
もし、痴漢を目撃した第三者がいると、それは重大な証拠となります。他方、「この人は痴漢していませんでした」等の証言をしてくれた場合、自らの疑いを晴らしてくれることにもなります。
客観的な証拠が少ない痴漢事件において、第三者の証言はとても重要なものです。
(6) 被疑者の供述
被疑者の供述も、痴漢を証明する証拠となります。
特に、自白は、その偏重による冤罪の危険性が指摘されているにもかかわらず、実務では、現在もなお重要視されているため、取り調べ担当の警察官が恫喝したり、素直に認めれば軽い処分で済むなどの虚偽の誘導をするなど、事実上、自白を強要する捜査があとを絶ちません。
しかし、いったん自白をすると、それが真実でなくとも、そのまま有罪になる可能性が高まります。
3.痴漢を疑われた場合
(1) 一貫して痴漢を否定する
もし、痴漢をしていないのに、痴漢を疑われた場合、一貫して否定することが重要です。
先述のように、痴漢事件において、被疑者が自白をすると、それだけで有罪になる可能性が高まります。また、一度自白したが、後に「やっていない」と供述しても、供述に一貫性がないため、信憑性に疑義が生じるでしょう。特に、自白した内容の供述調書に署名指印してしまった場合、後の裁判で、その内容を否定することは至難の業です。
そのため、やっていないのなら、最初からありのまま証言して痴漢行為を否定するべきです。
(2) 弁護士に相談する
もっとも、痴漢事件では、客観的な証拠が少ないため、被疑者、被害者の言い分が水掛け論に終わる可能性があります。そのため、痴漢を疑われたら、法律の専門家である弁護士に相談するべきでしょう。
弁護士は、被疑者の疑いを晴らすための最善な手段を尽くしてくれます。
痴漢を疑われた際、巷で言われている、無理矢理逃げるというのは推奨できません。静止を振り切った逃走行為で他人をケガさせた場合には傷害罪(刑法204条)が成立する可能性もあります。
また、線路を使って逃走するなどし、鉄道の運行を妨げた場合、莫大な損害賠償を請求されることがあります。
更に、逃走に失敗した場合、あるいはその場で成功しても、駅の防犯カメラの映像等から身元が割れて、後に逮捕された場合、自分はやっていない!と言っても、その証言に信憑性はありません。
痴漢を疑われても、逃げることはやめるべきです。
4.痴漢をしてしまった場合
もし、本当に痴漢をしてしまい明らかな証拠がある場合は、即座に罪を認め、被害者に謝罪をするべきです。なぜなら、痴漢をした明白な証拠があるにも関わらず、「痴漢をしていない!」等と言ってしまうと、逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断され、逮捕・勾留といった長期に及ぶ身体拘束をされる可能性があるためです。
また、刑事事件に精通した弁護士に相談するべきです。
罪を犯した場合、必ず起訴・有罪となるわけではありません。起訴処分を避けるためには、被害者との示談が重要となります。
もっとも、示談をするにあたっては、示談金の額の合意や示談書の作成、被害者の連絡先が必要です。それは、弁護士に頼まなければ適切に行えないと思われます。
そのため、痴漢をしてしまった場合、弁護士に依頼することをお勧めします。
5.まとめ
痴漢の証拠は、防犯カメラの映像のような客観的なものから、被害者の証言のような主観的なものまで様々です。それらを総合考慮して、被疑者が痴漢をしたか判断することになります。
もし、痴漢を疑われた場合は、すぐに弁護士に相談をしてください。
また、実際に痴漢をしてしまい捕まったという場合も、適切な対応で不起訴となるために弁護士へと相談をすることが大切です。
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